「つめたいまぶた」

小金井アートスポット シャトー2F
残り2日

アーティスト

深澤あめり、森本直人、石原孝陽、Shoichi Kochi、堀家麻由、各務一爽、福島大芽、lu
「写真を見る」という行為は、夢をみることに似ている。写真を見つめる時、視線はさまよい私たちの思考を自由に解き放つ。写る風景を軸に世界がぼんやりと構築されていく。視界が広がっていくだけでなく、匂いも、風の音も、肌にあたる日差しの強ささえも体験してしまう。目を離すと、写真内の現実を否応なく受容させられていた不自由さに気づく。自分の記憶と体験に基づいた広がりしか許されていない。拘束された自由、それゆえの魔力、そして魅力。

対照的に「写真を撮る」という行為は、夢から覚めることに似ている。撮影者の直観は現実と画像の狭間で揺れ動く。撮影者の目に映った「現実」は、冷たい機械の介入を経て、瞬間的に捉えられ、「像」として固定される。しかし、その過程で、自分が見た「現実」がいかに恣意的で主観的であるかを自覚させられる者もいるだろう。たとえレンズ越しに見た景色が完璧であったとしても、その景色をフレームに収める瞬間、意識的な選択によって切り取られ、写真としての「現実」が形作られていく。

写真はその瞬間に存在した「現実」を変えることはできない。どんな解釈を加えようとも、常に「こう在った」という事実を残し続け、その事実を証明し得る絶対性を持っていた。
写真が絶対性を帯びているからこそ、私たちは過去の瞬間を追体験するだけでなく、その裏にある撮影者の意図や感情、さらには写真が示唆する未来の可能性に疑うことなく触れることができた。私たちは写真の語りに耳を澄ませ、写真の問いかけに答え続けてきたのである。

この展示では、受動的な態度をやめ、私たちが写真に問いを投げかける側になってみる。

写真において、観者・指向対象・撮影者という三者が揺らぐことはなかった。
(ここで明らかにしておきたいのは、見る主体というのも、AIに拡張されつつあるということだ。人間よりもはるかにAIの方が多くの情報を収集し、多くの画像を見ることになる。その拡張は、指向対象にも影響を及ぼし始めている。AIが画像を解析し、分類し、再構築することで、指向対象そのものも変容しつつあるのだ。AIには瞼がない。シャッターによって撮影と非撮影が明確に分けられていたカメラと違い、AIは常に見ている眼なのかもしれない。)

しかし近年、写真における三者の存在は、「確かさ」と「不確かさ」の間で宙吊りになっている。デジタル写真の加工技術やAIを用いた生成技術の普及によって、写真の絶対性はますます揺らぎ、複雑化している。本展示では、こうした写真の「確かさ」と「不確かさ」が交錯するイメージを「揺れる像」と呼ぶ。

写真が必ずしも実在の光景を反映していない場合が増えつつある現代においても、多くの観者は「写真は現実を記録したもの」という先入観を持ち続けているだろう。この認識と、技術による新たな現実とのギャップが、写真の解釈を曖昧で難解なものにしていると言える。写真は一瞬の現実を切り取り、それを視覚的に固定したものとして提示される。しかし、その「現実」は撮影者の視点や選択、そして使用された技術によって形作られており、見る者はその揺らぎを感じざるを得ない。

今日では、加工することが容易になり、かつてはそのまま映し出されていたはずの光景を、後から変えられるケースも増えている。そのため、写真を見ても、そこに映るものが「現実そのもの」とは限らない。背後に隠された意図や選択を意識し、時にはその「現実」に疑問を抱くことさえある。

この不確かさこそが、「揺れる像」の本質であり、今の写真なのだと思う。
私たちは、写真を見つめることでその不安定さに気付かされ、「現実とは何か」「それをどう理解するのか」という問いを投げかけられる。

写真は常に変化し続ける性質を持つ。しかし、「今の写真とは何か」という問題意識と、その渦中を生きる若手作家とを同じフレームに収め、「今日の写真像」を現像(展示)することはできるかもしれない。

カメラのシャッターを人間の瞼のように捉えてみる。人間にとってもカメラにとっても、瞼は「外界の知覚」と「内面(記録)」の境界である。瞼のあちら側には常に世界が在り、こちら側には常に誰か(撮影者/想像者)がいた。誰かが瞬間を選択すると、カメラが眼を瞑る。
一旦瞼を閉じてみる(シャッターを切ってみる)。つめたいまぶたの向こう側にはどんな像が浮かぶのだろうか。その中で浮かび上がるイメージは、写真の「確かさ」と「不確かさ」を行き来する作品になるだろう。

これからの写真こそが、単なる記録ではなく、見る者の解釈や技術の進化とともに常に不確かさを抱えながら変容していく。そして私は、本展示で生まれる「揺れる像」の不確かさをも「写真」と呼びたい。

スケジュール

開催中

2025年8月22日(金)〜2025年8月31日(日)あと2日

開館情報

時間
12:0018:00
入場料無料
展覧会URLhttps://artfullaction.net/gallery-event/%e3%81%a4%e3%82%81%e3%81%9f%e3%81%84%e3%81%be%e3%81%b6%e3%81%9f/
会場小金井アートスポット シャトー2F
https://artfullaction.net/gallery-event/?t=1555986903902#googtrans(null)
住所〒184-0004 東京都小金井市本町6-5-3 シャトー小金井2F
アクセスJR中央線武蔵小金井駅南口より徒歩5分
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