加藤泉、荻野いづみ(アンテプリマ クリエイティブ・ディレクター) ポップアップストア前にて 撮影:Xin Tahara(編集部)
女性向けバッグや洋服を展開するファッションブランドのアンテプリマ(ANTEPRIMA)は、2025-26年秋冬コレクションで現代美術家・加藤泉とのコラボレーションシリーズ「IZUMI KATO」を発表する。
9月3日の全店での発売に先駆けて、現在、原宿・GATEにてポップアップストアを開催。全ラインアップが公開されている。会期は8月27日まで。
加藤泉(1969~)は国際的に活躍するアーティストで、9月1日まで島根県立石見美術館で「加藤泉 何者かへの道 IZUMI KATO: ROAD TO SOMEBODY」を開催中。子供のような素朴さと神秘性をあわせ持つ人物像で知られ、抽象性とシュールレアリズムの間を行き来するような絵画や彫刻などで人気を博している。
本コレクションでは、そうした加藤の遊び心あふれる造形や鮮やかでダークなカラーパレットを、アンテプリマのクラフトマンシップと融合。「ウェアラブルアート」として、日常のなかでアートを纏う新しい価値を提案する。
クリエイティブ・ディレクターの荻野いづみは現代アートへの高い関心を持ち、これまでも様々な現代アーティストとのコラボレーションを行い業界内から大きな注目を集めてきた。そうしたブランドとアーティストの協働が豊かに結実したポップアップストアとなっている。
ポップアップストアでは「KATO IZUMI」シリーズのワイヤーバッグ全19型や、ウェア(洋服)コレクションを展開。そしてコラボレーションの着想源となった加藤の作品群も並ぶ。
ブランドを象徴するワイヤーバッグには、加藤作品に登場するデフォルメされた人物や動物、植物など神秘的なモチーフに着想を得た柄や、加藤作品の人物の口元から出ている芽を模ったユニークな造形のものなど幅広いラインアップが登場する。
2025-26年秋冬は2月〜3月に開催されたミラノ・ファッションウィーク(MFW)で発表され、高い評価を博している。不完全を受け入れ、欠点を称えることで、ミニマリストなスタイルとクラフト感のある魅力を溶け合わせることを掲げた本コレクションは、 「モダンでありながら粗野、シンプルでありながら複雑」といった二項対立のコンセプトや、「加藤泉氏のアートに触発されたハプティックテクスチャー」といった触覚的な質感を提案する。手触りの良いニット、ベルベット、モヘア、起毛加工といった素材がコレクションに一体感を与え、それぞれが着られるアートピースとなることが目指された。
ポップアップストアでは、これらのコレクションがGATEの空間で加藤作品と調和を生み出しながら展開されている。
今回のコラボレーションについて、Tokyo Art Beatでは加藤泉と荻野いづみにインタビュー。ここではふたりからのコメントを紹介したい。
——アンテプリマからコラボレーションのご提案がなされた際、どのように感じられましたか? ANTEPRIMAへの印象はどのようなものでしたでしょうか。
アンテプリマは、日本にいるときはエレガントなバッグのブランドのイメージでしたが、香港にいることでニットのファッションブランドと知り、とても新鮮でした。
元々デザイナーの荻野さんとは香港で交流があったので、今回頼まれた時は安心して引き受けられました。
荻野さんはハッキリした人なので、デザインも好きにやってもらって、サンプルのチェックをするのがいいかなと思いました。
——今回のコラボレーションにおいて、加藤さんから出されたアイデアやご提案、リクエストにはどのようなものがありましたか。またそうしたコミュニケーションをとられた理由もお教えいただけますでしょうか。
上記の理由で、まずはアンテプリマ側に自分の作品を使ってデザインしてもらってから、こちらでチェックする方法を提案しました。
僕はデザイナー、ましてやファッションデザイナーではありません。デザインこそアンテプリマの領域なので、彼らとのクリエーションとのコラボレーションだと思っていました。
できてきたサンプルを見たら、ああ、こういう解釈なんだ、大丈夫なんだなって思いました。バッグは手仕事で作られていて、好感もちましたし、グラフィックに関しても解釈の仕方が面白かったし、いい意味で僕の作品が素材になっていて、ただ僕の作品をコピーして使うのでは無い姿勢が、僕の作品作りの姿勢とも似ていて、嬉しかったです。
——コラボレーションのなかで、とくに気に入っているアイテムはどれでしょうか? 理由もお教えください。
どの商品も良いので悩みますが、やはり、コレクションで着た青いセーターです。コレクションショーで着て歩いたので思い入れがあります。
自分の作品からインスパイアーした予想外なデザインの面白さと、素材も柔らかく軽くて着心地の良さも理由のひとつです。
——荻野さんは加藤作品のコレクターでもありますが、加藤泉さんの作品のいちばんの魅力はどのようなものでしょうか。
加藤泉さんの作品には、原初的な生命の息吹と、現代に生きる私たちの心の奥底に響く普遍的な感情が共存していると思います。時代や国境を超えて人々が共有する「生きることの根源的な喜びと不安」が、あの造形と色彩に静かに、しかし確かに宿っていると感じます。その有機的でありながら、どこか異世界的な存在感は、私にとってまるで人間の魂の深層を覗き込むような体験ができ魅力的でした。
——ブランドの象徴であるワイヤーバッグに、加藤泉さんの作品のエッセンスを取り入れるうえで、とくに大事にされたことや、苦労されたことはなんでしょうか。
ワイヤーバッグは、私たちにとってたんなるファッションアイテムではなく、時間を超えて持ち主の人生に寄り添う「物語を運ぶ器」です。その器に加藤さんの世界を映し込むためには、たんなるモチーフの転写ではなく、彼の作品が持つ魂の質感をどう立体的に織り込むかが重要でした。
ワイヤーという無機質な素材に、有機的で揺らぎのある生命感を吹き込む——その融合は容易ではありませんでしたが、加藤さんの色彩感覚やフォルムを、光の反射や編みのリズムに変換することで、作品とバッグが互いを引き立て合えないか?と考えました。また作品の一部を売れ筋のSTANDARD MINIATURA(スタンダード ミニアトゥーラ)に取り入れ、そこから発芽した様にデザインするなど、「大人かわいい」をどう表現したら良いかに悩みました。
——2025-26年秋冬コレクションは、加藤さんの作品の色彩感覚を強く感じさせるものから、アイコニックな「顔」をあしらったものまでじつに多様です。コレクション発表後、どのような反響が寄せられましたか?
発表直後から、国内外のお客様やメディアから「まるでアートを持ち歩いているようだ」という声を数多くいただきました。中には、加藤さんの作品を以前から愛している方が、バッグを通じて新しい感情や解釈を見出したという感想もありました。
私にとってもっとも嬉しかったのは、このコレクションが、たんなる美の享受にとどまらず、人と物、そして作り手と持ち主のあいだに新たな対話を生んだことです。それは、アンテプリマが目指す「日常に息づくアート」という理念が、確かにかたちになったと思っています。
ショーの音楽、加藤泉さんの「蠍とサボテン」も印象に残っていていまでも口ずさみます。
本当に楽しいコラボだった。次は誰?と聞かれる事が多いです。
なお、「IZUMI KATO」コレクションの発売を記念して、本コレクションの購入者にはアンテプリマ オリジナルIZUMI KATOトートバッグがもれなくプレゼントされる(※トートバッグはポップアップのみでなく、全店での発売時にも付属)。
またポップアップストアでは、購入者に先着でANTEPRIMA×IZUMI KATOオリジナル付箋をプレゼント(数量限定)。こちらも見逃せない。
福島夏子(編集部)
福島夏子(編集部)