公開日:2025年8月14日

戦後80年に問う原爆と芸術。川崎市岡本太郎美術館「明日の神話 次世代につなぐ 原爆×芸術」展で広島市立基町高等学校の生徒と現代作家9組が共演

広島市立基町高等学校の生徒が描く「原爆の絵」42点と、小林エリカ、蔦谷楽、冨安由真ら現代作家9組が戦争と核を問う。会期は7月19日〜10月19日

米谷健+ジュリア 中国-クリスタルパレス万原子力発電国産業製作品大博覧会 2016

次世代につなぐ「被爆の記憶」

川崎市岡本太郎美術館で、芸術を通じて戦争と核の記憶を次世代へとつなぐ展覧会「戦後80年 《明日の神話》 次世代につなぐ 原爆×芸術」が、10月19日まで開催中。

本展の核心を成すのは、広島市立基町高等学校・創造表現コースの生徒たちが描いた「次世代と描く原爆の絵」42点だ。爆心地に程近い同校では、約20年にわたり生徒が被爆者から証言を聞き取り、その記憶を絵画として残す活動を続けている。

会場風景

津村果奈が証言者・岸田弘子さんの記憶をもとに描いた《死んだ我が子を背負う若いお母さん》(2016)や、髙山愛季が笠岡貞江さんの証言から描いた《ああ!幽霊だ!!》(2013)は、原爆直後の混乱と恐怖を生々しく描き出す。原爆を体験していない高校生の視点を通すことで、被爆体験は新たな解釈と表現を得ていく。

会場風景

現代アーティストたちの視点

本展のもうひとつの軸となるのが、1945年の記憶を出発点としながらも、現代社会が直面する問題を独自の表現で問い直す9組の現代アーティストの作品群だ。参加作家には安藤榮作、笠木絵津子、後藤靖香、小林エリカ、蔦谷楽、冨安由真、安喜万佐子、米谷健+ジュリア、李晶玉が名を連ねる。

小林エリカ Sunrise 2016
会場風景

冨安由真の《影にのぞむ》(2023)は、被爆者たちの手と影をモチーフとしたインスタレーション。2023年に原爆の図 丸木美術館で発表した作品の新バージョンとして登場し、記憶の場と現在の鑑賞体験を重層的に織り込んでいる。

冨安由真 影にのぞむ 2023

李晶玉の《GROUND ZERO》(2022)は、東京の都心を広島の被爆範囲に重ね合わせることで、被害の規模を現代都市の感覚で実感させる仕掛けだ。

李晶玉 GROUND ZERO 2022
会場風景より、李晶玉の作品

ニューヨークを拠点とし、核の歴史的悲劇をテーマに日米両国でリサーチを続けてきた蔦谷楽は、最新映像作品《ピジンゴのインコ》(2025)を発表している。

会場風景より、蔦谷楽の作品
蔦谷楽 ピジンゴのインコ 2025

岡本太郎の作品との対話

常設展示室では、岡本太郎の核をテーマとした作品など、約120点を展示。同じ空間には、ウランガラスを用いた米谷健+ジュリアの《中国-クリスタルパレス万原子力発電国産業製作品大博覧会》(2016)や、幼少期から祖父や大祖父の戦争体験を聞いて育った後藤靖香の《堂々巡り》(2024)も並ぶ。

会場風景

これらの作品は、岡本太郎が《明日の神話》(1968)で示した核の惨禍を乗り越えて明日に向かう人間像と対話を重ねながら、現代における核と戦争の問題を多角的に検証している。

後藤靖香 堂々巡り 2024
会場風景

戦後80年という節目を迎え、被爆者の高齢化が進むなか、記憶をいかに次世代へ継承するかは重要な課題となっている。本展は、アートという表現を通じて、その継承の新しいかたちを提示する試みでもある。会期中には、基町高校卒業生によるワークショップ、出品作家によるトークイベントなど多彩な関連プログラムが予定されており、作品鑑賞を超えた学びと対話の機会も提供される。

岡本太郎 明日の神話 1968

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