会場風景より、exonemo《Body Paint [DAZZLE edition]》(2024)
ダンスカンパニー「DAZZLE」と9組のアーティストのコラボレーションによる常設イマーシブエクスペリエンス「Anemoia Tokyo」が、東京・大手町で連日上演されている。
1996年に東京で結成されたDAZZLEは、「すべてのカテゴリーに属し、属さない眩さ」をスローガンに掲げるダンスカンパニー。ストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合したスタイルを追求し、映画やコミック・ゲームなどの日本のカルチャーの要素を取り込んだ物語性の強い作品を創作しながら、より多くの人々に向けた「開かれたダンス」の実現を目指している。
2017年以降は、ロンドンやニューヨークで始まった「イマーシブシアター」に取り込んでおり、日本での先駆的な存在として多数の作品を発表。「イマーシブシアター」は、「観客が座り、舞台上の演者を鑑賞する」という従来の演劇の考え方とは異なり、「観客が実際に物語のなかに入り込む体験型の演劇」のこと。2021年には日本初の常設型イマーシブシアター「Venus of TOKYO」をオープンし、お台場ヴィーナスフォートの閉館に伴う閉業まで10ヶ月間にわたって毎日公演を行ったことでも話題を呼んだ。現在は、白金の常設型イマーシブシアター「Unseen you」でも連日公演が行われている。
「Anemoia Tokyo」は、DAZZLEにとって常設型の4作目の作品となり、2024年10月に東京駅近郊にオープンした。「Anemoia」は、「行ったことのない場所なのになぜか懐かしさを感じるという不思議な感覚」を表す言葉。海外からの観客も意識し、「ノンバーバル」であることをテーマとしており、過去、現在、未来と変化しながら受け継がれる日本の文化を独自の世界観で表現。“秘密の駅”を舞台に、観客を列車に乗せて別世界へと誘う幽玄なストーリーが展開されている。
ここでは初めての試みとして、クリエイティブスタジオ・Whatever Co.のプロデュースのもと、主にメディアアートの分野で活動するアーティストたちとコラボレーションを実施。舞台のための美術セットを新たに作るのではなく、既存のアート作品を舞台美術に用いて、見立てを行うことで、互いに価値を拡張し合う新たな空間作りに挑んだという。これにより、これまでのイマーシブシアターにはなかった「アートを鑑賞する」という視点から、新たなイマーシブ体験を提供することを目指している。
参加アーティストは、exonemo、後藤映則、尾潟糧天、國本怜、ryo kishi、KAITO SAKUMA、creative label nor、礫 ‒TSUBUTE‒、ゆきあかりら。また公演の一部キャラクターの衣装スタイリングを、川上淳也(SEVEN BY SEVEN)、北澤武志(DRESSEDUNDRESSED)が手がけている。6月24日からは一部展示替えが行われ、古澤龍などの作家も参加する。
今回の取り組みは、アート作品の発表や展示の機会を、展覧会以外の場所で商業性を伴いながら増やそうとする、新しい試みでもあるという。そのため会場は、展覧会としても公演としても成り立つよう設計されており、来場者はアート鑑賞と公演、それぞれのガイドとなる2枚のハンドアウトを入り口で配布される。また、開場から開演5分前までは「エキシビションタイム」として設定されており、開演前に場内のアート作品をじっくりと鑑賞することができる。
ここからはDAZZLEとWhatever Co.のメンバーが参加したオフィシャルインタビューの言葉より、「Anemoia Tokyo」の見どころを紹介する。
飯塚浩一郎(DAZZLE)はWhatever Co.とのコラボレーションについて「これまで様々な公演を行ってきた中で、まずDAZZLEの公演としての新たな試みは『ノンバーバル』であることでした。海外の方々にも見ていただける作品をつくるにあたって、パフォーマンスだけではなく、パフォーマンスを見ていない時間や空間も面白いと感じていただけるようにするにはどうすればいいだろうかと。そこで美術や作品のあり方について思考しているなかで、今回新たな試みとなったアート作品の展示について考えていくようになりました。国境や文化を越えてよりストーリーへの没入感や深みが出るきっかけになり得ると思い、Whateverさんにお声がけした」と説明。
いっぽうの福地諒(Whatever Co.)は次のように語る。「『ノンバーバル』というテーマを受けて、説明的すぎず、過去でも未来でも、はたまた、いまでもないかもしれない時間軸を空間に作ろうと思いました。一見抽象的なコンセプトかもしれないけど、日本人ならば特に、誰しもが心のどこかに飼っている自然への憧憬や畏怖のような感覚なのではないだろうかと。そうした、曖昧だけど誰もが持っている普遍性を表現するために、アート作品を空間に配置することで、アート作品の展示でもあり、イマーシブシアターの公演でもあるというコンセプトを設計していきました」
実際に出来上がった空間について、長谷川達也(DAZZLE)は「観客の皆さんにとって、日常から一瞬でも離れられる特別な体験や見たことのない景色を見れる刺激をこの空間の中では作ることができました。それはアートを鑑賞するときもダンスを見るときも受け取られる同じ感覚だと思っていて。いっぽうで、空間の中にある『電車』は、現実と隔離世と言われる不思議な世界のあいだにある日常的なモチーフとして機能していると思います。そこにアート作品が入り、ダンスと共存することでより特別な体験を提供できていると感じます」と自信を見せる。
展示作品については、「並べている作品を見ると、『東京』らしいテックカルチャーのようなニュアンスが強く、いわゆる伝統的な日本を表現するモチーフは入っていないです。それでもなおやはり、日本の目線が入った作品であることを一貫して感じるキュレーションになっていると思います」と松山周平(Whatever Co.)。
会場では、DAZZLEによる生のパフォーマンスと展示作品が日々、化学反応を起こす。板垣和宏(Whatever Co.)は「展示計画としてはDAZZLEさんからストーリーを聞き、それをもとにキュレーションの計画を立てるというプロセスで進めましたが、展示を済ませDAZZLEさんに引き渡してからは逆にストーリーやキャラクターにアート作品が影響を与え、そこから来場者にも伝播していくといった、従来のイマーシブシアターともまたちょっと違う新たな在り方が生まれているようでもあります」と語る。
このようなプロセスはDAZZLEにとっても初めての経験だといい、「それこそがコラボレーションの醍醐味」と長谷川。福地は「アートがダンサーに影響を与え、パフォーマンスが日々変化していく。だからこそ、イマーシブシアターが元来持つ『何度見ても新しい』という価値を、今回はさらに別の次元で実現できたように思います。訪れるたびに、作品と物語の関係性が新しい発見を与えてくれるはずです」と呼びかけた。
チケット情報などの詳細は、公式サイトで確認を。領域を横断した多彩なアーティストとの協働による空間演出で展開される、新たな没入体験に触れてみてほしい。