1854年の創業以来、ファッションの創造性を革新してきた高級メゾン、ルイ・ヴィトン。その歩みと精神の深層をたどる展覧会 「ビジョナリー・ジャーニー」展が大阪中之島美術館で開催される。会期は7月15日〜9月17日。
会場には、メゾンのコレクションから厳選された1000点を超えるアイテムや資料、アーカイヴのほか、香雪美術館(神戸)やギメ東洋美術館(パリ)、ケ・ブランリ美術館(パリ)などの協力のもと数々の名品が登場。メゾンの歴史を、過去から現在、そして未来へとつなぐように展開する。本展は、タイ・バンコクで開催された展覧会の巡回でありつつ、そこに日本独自の視点を加えた構成となっている。
美術史家・キュレーターのフロランス・ミュラーの協力のもと、世界的建築設計事務所OMAの重松象平が会場空間を手がけた。
展覧会場に入る前から、本展は始まっている。大阪中之島美術館の吹き抜け空間には、メゾンを象徴するトランクを模した照明が吊られており、会場入口にはメゾンの伝統と歴史が息づくトランクによるドームが出現。これから始まるルイ・ヴィトンの旅への期待感が掻き立てられる。
本展はメゾンの培ってきた職人技や、伝統と新しさを兼ね備えた創造性といったルイ・ヴィトンの“魂”に焦点を当てる。全11章で構成された質量ともに充実の内容だ。
冒頭の「1.アニエール」では、パリ郊外のアニエールにあるメゾンの心臓とも言うべきアトリエの成り立ちを紹介。旅行用トランクの製造事業の拡大で大きな成功を収めた創業者ルイ・ヴィトンが、パリからこのアニエールへと拠点を移し、後にここは一族の住まいともなった。
「2.原点」では、メゾンの歴史を辿る資料の数々が魅力的な会場構成とともに展開。青い画面として描かれた若き日のルイ・ヴィトンの隣にかけられた洋装の日本人の肖像画のモデルは鮫島尚信で、日本で初めてルイ・ヴィトンのトランクを購入した人物だという。このように本展では、随所に日本との関わりが示される。
「3.冒険」は、メゾンの核となる「旅の真髄(こころ)」をテーマにした展示。アメリカを代表する小説家アーネスト・ヘミングウェイや、音楽家・坂本龍一ゆかりの貴重な特注トランクもお目見えだ。
本展の随所に見られる「旅」というキーワードは、移動のための道具としてのトランクを起点に、文化、時間、記憶、そして人々との関係を織り成すメタファーとして機能している。空間全体が、来場者をひとつの「旅」へといざなう構成となっているのだ。
「4.ルイ・ヴィトンと日本」では、1867年のパリ万国博覧会を大きな契機として巻き起こったジャポニスム・ブームと、その文化的な出会いにインスピレーションを経てデザインに生かした創業者の孫、ガストン=ルイ・ヴィトンのストーリーを紹介。
さらにマーク・ジェイコブス、キム・ジョーンズ、ニコラ・ジェスキエール、ヴァージル・アブローら歴代のアーティスティック・ディレクター、デザイナーが日本からインスピレーションを受けて生み出したクリエーションの数々が目の前に広がる。
「5.素材」ではトランクの構造や耐久性に欠かせない重要な素材、木材、金属、レザー、キャンバスにフォーカス。
「6.モノグラム・キャンバスの歴史」「7.モノグラム・キャンバス」は、メゾンのアイデンティティであるモノグラムの歴史や成り立ちを紹介する。
とくに注目すべきは、19世紀よりパリ市立公文書館に保管され、近年再発見されたモノグラム・キャンバスの初期サンプル。保存状態の良さも含めて資料としての価値が高い。ルイ・ヴィトンの代名詞ともいえるこのパターンの源流に触れることができる展示は、本展の見どころのひとつである。
製造工程を実際に見ることのできる「8.アトリエ」では、素材の扱いやディテールへのこだわりなど、メゾンの職人技と技術の継承への姿勢が体現されている。
「9.耐久性試験」では、ロボットを用いた耐久性テストの現場を再現。メゾンの職人技へのこだわりを間近でみられる貴重な展示だ。
本展には、メゾンのアンバサダーを務める俳優やセレブリティたちのために制作された特注のトランクやドレスも展示されている。
「8.アトリエ」には、Number_iのメンバー、平野紫耀のために製作された「ツールボックス・トランク」が登場。平野の趣味であるバイクと、アーティストとしてのライフスタイルが融合したスペシャル・オーダーだ。
「10.アトリエ『ラレックス』」では、オーダーメイド製品専門の特別なアトリエであるラレックスの仕事を紹介。広瀬すずが2025年にカンヌ国際映画祭で着用したドレスをはじめ、ケイト・ブランシェット、エマ・ストーン、ゼンデイヤら映画スターが着用したアイテムが揃う。
最終章となる「11.コラボレーション」では、メゾンが1997年以来挑戦してきた大胆なコラボレーションの軌跡を紹介。草間彌生、村上隆といったアーティストらとの協働や、シュプリームとのコラボレーションなどに光をあて、ルイ・ヴィトンの伝統と革新の相乗効果を体現する展示となっている。
会場を出たところには、ギフトショップを展開。モノグラム・キャンバスで仕立てたスマートフォン用カードケース「ポルト カルト・マグネット」の限定カラーが販売される。
さらに本展限定のブックレットや、ルイ・ヴィトンと日本の関係に焦点を当てた書籍、ノートブックなど、幅広くセレクトされたアイテムが揃っているので、充実した展示の余韻とともに、チェックしてみてはいかがだろうか。
福島夏子(編集部)
福島夏子(編集部)