「つくるよろこび 生きるためのDIY」会場風景より
「DIY(Do It Yourself / 自分でやってみる)」をテーマにした展覧会、「つくるよろこび 生きるためのDIY」が、7月24日から東京・上野の東京都美術館で開催される。会期は10月8日まで。
DIYとは、目の前の問題を自分自身の工夫で解決していくアプローチのことを指し、日曜大工や住民主体のまちづくりなど、様々な場面で実践されている。本展では、DIYをより良く生きるための方法であると同時に、不便や困難を乗り越えるための手段ととらえ、その過程にある「つくるよろこび」にも光を当てる。担当学芸員は同館の藤岡勇人。
藤岡は、「いわゆる『美術』だけでなく、生活など、生きるなかで育まれていく創造性をテーマに7組の作家を紹介する」と説明。出展作家には、若木くるみ、瀬尾夏美、野口健吾、ダンヒル&オブライエン、久村卓、伊藤聡宏設計考作所、スタジオメガネ建築設計事務所が名を連ねる。
展覧会は全4章で構成される。第1章「みることから始まるDIY」では、DIYの起点となる、身の回りをよく「みる」ことにフォーカス。文房具や台所用品、空き缶、家具、チラシなど、日用品を版として再利用した作品を手がける若木くるみの作品を紹介する。会場には、若木の自宅にあるものを用いて新たなイメージを生み出した実験的な版画作品が、版となったものとともにダイナミックに展示されている。
つづく第2章は「失って、立ち上げていくDIY」。自然災害や経済的困難などに見舞われ、多くのものを失った人々が、暮らしを新たに立ち上げていく営みに着目し、瀬尾夏美、野口健吾の2作家の作品を取り上げる。
瀬尾は、東日本大震災後の2012年から岩手県陸前高田市や宮城県仙台市などに暮らし、その風景の変化や災禍とともに生きる人々の語りを作品にしてきた。本展では、そうした人々の営みをとらえたドローイングや絵画、文章などを展示。展示室入り口の作品は、震災当日に描いたものだという。
いっぽう野口は、川辺や公園に暮らすホームレスの人々のもとを訪れ、かれらのポートレート写真を撮影してきた。雨露をしのぐために廃材やブルーシートを使って作られた独自の小屋には、様々な創意工夫や創造の断片が見られる。本展では、日本の都市の片隅で生きる人々の姿をとらえた「庵の人々」シリーズを展示している。
第3章「DIYでつくる、かたちとかかわり」は、彫刻的なアプローチに立脚しながら、DIY的な手法で人や社会と新たな関わりが立ち上がるプロセスを重視する作家たちを紹介。
ロンドンを拠点に活動するアーティストユニット、ダンヒル&オブライエンは、東京都美術館の野外彫刻のひとつ、最上壽之の《イロハニホヘトチリヌルヲワカヨタレソツネ・・・・・・ン》からかたちと言葉の関係に関心を抱いたことを出発点に、イギリスと日本でワークショップを実施。野外彫刻との遠隔的な「対話」を通じて、3Dプリントやアナログな装置を用いた新たな彫刻作品を構築した。
久村卓は、身体に負荷をかけずに制作できる素材や手法により、既製品を使った彫刻や刺繍、パッチワークといった作品を制作している。本展では、手芸による「着られる彫刻」などを展示するほか、会場にバーカウンターのようなスペースが出現。ここでは毎週「織物BAR」が開かれ、バーでお酒を選ぶようにカウンターで好きな毛糸や布をオーダーし、10cm四方の織物を作ることができる。
展覧会を締めくくる第4章は「DIYステーション──自分でやってみよう!」。伊藤聡宏設計考作所、スタジオメガネ建築設計事務所が空間設計を手がけ、来場者参加型の展示が広がる。ほかの出品作家たちの制作手法などを体験できるコーナーや、資料展示、休憩コーナーなどが展開されている。空間設計はもともとの美術館の什器を生かして設計されている。
アーティストたちによる表現のなかのDIYの実践に光を当てる本展。多様な作品を通じて、「つくること」にまつわる思考や手法の広がりをたどることができる。